Asuna / Mille Drops

recit13

CD / Digital
2017.08.20(sun) out
Distributed by Inpartmaint (JP)

1. Mille Drops 2. Water Rings Spreading In Kizaki Lake 3. Two Ways On Way Back In The Rain


アンビエント、ドローン、様々な楽器を使用したインディー・ポップから実験音響まで、ジャンルを横断しながらも一貫した音楽性を保ち、国内外を問わずリリース/ライブなど多岐に渡る活動を続ける、Asuna。彼の新作「Mille Drops」が、パリを拠点とするレーベルRÉCIT(レシ)から発表される。今作は、「水や雨、水滴、波紋」などをテーマに制作された、繊細な響きを持ったアンビエント/音響実験作品となっている。 本作「Mille Drops」には、Mille Drops、Water Rings Spreading In Kizaki Lake、Two Ways On Way Back In The Rainと、3曲が収録されている。「自分のこれまでのディスコグラフィーとは違って、ドローンというよりは単音や断続音のレイヤーを何重にもして、結果的に持続になり全体を俯瞰できるようなものにした」とアーティスト自身が語り、また数年をかけて録音、編集、構成、パターンの選別が行われたというこれらの収録曲は、彼のこれまでの作品とアプローチを異にしている。 タイトル曲であるMille Dropsでは、まさに無数の電子音が繊細な響きを伴って、空気中を漂い、水中に潜り、下降し、そしてまた表面近くにまで浮遊する。そういった一連の運動や、あるいは海底から頭上に降り注ぐ光のゆらぎを仰ぎ見ているかのような感覚が、洗練された音響処理によって表現されている。しかしそれは決して描写の段階に留まるものではなく、ひとつの具体的な音の体験であり、聴取者はそれぞれ自身が、有機的に展開される音像の広がりの中で目眩くような無数の光景やイメージと出会うだろう。 2曲目のWater Rings Spreading In Kizaki Lakeでは、どこか頼りないような、儚い鐘の音が控えめに鳴り響く。ここで聴かれるメロディーや、音同士の空間の取り方は、まさにAsunaの作品を聴いているという感覚を与えてくれる。この鐘の音とその周りを行き来していた小さな電子音は、増幅され、反響し、やがて残響の中に消えていく。そして、また音はやってくる。かつてJohn Cageはある対談において、「音はどこからやって来て、どこへ去っていくのか。謎、それは過程である」と語ったが、点描と持続が総体を織りなすこの曲の音響空間の中で、私たちはまさにこの問いに出くわすかのようだ。 最後のTwo Ways On Way Back In The Rainはこのアルバムの中で一番短い曲で、おそらく最も素朴な響きを持っている。1曲目Mille Dropsの冒頭の低音部で聴かれたようなシーケンス/パターン化されたモチーフが、ここでも再び細かな電子音を従えて、より明瞭な形で提示されている。6分強のこの曲は、もはやドローンの範疇では捉えられない。ここでASUNAは、持続や時間軸の問題よりも、より単純な形で、むしろ音色や音同士の関係性に関心を払っているように思われる。その意味でこの最後のトラックは独立したものでありながらも、アルバム全体の音色的側面の素朴なスケッチのようでもあり、制作過程におけるアーティストの思考を垣間見ているようで興味深い。 Morton Feldmanは、絵画と音作品における「表面」を考察する中で、音楽には大別して2種類あると考えた。すなわち、時間軸に「潜り込ん」でリズミックな構成に留まるもの。そして時間と「溶け合」って、これと一体化するものである。Asunaが新境地を見せる今作は、間違いなく後者に属するものだろう。ここでのAsunaはまるで、様々な時間軸に潜り込んだ音たちをどこかに隠し貯めておいて、それらを録音時間という便宜的な枠の中に、屈託のない所作で一気に撒き散らしたかの様である。ここで私たちが出会うもの、それは、本人が制作の過程で自覚していたように、持続化された音 - ドローンによって無化された(ように思われる)時間 - ではなく、その瞬間にまさにそこにある音である。この刹那的な音たちは、どこにでも弾け飛んで行ってしまいそうで、油断ができない。しかしその一回性を受け入れるのならば、聴取者はいつまでもそこで戯れていられるような、非直線的な音響体験の広がりに包まれるだろう。この感覚はとても豊かで、スリリングなものである。 Lucky Kitchen、Apestaartje、SPEKK、Meeuw Muzak、HEADZ/Vectors、そして自身のレーベルaotoaoなどから発表してきたリードオルガンによるドローンや多様な楽器、玩具、エレクトロニクスを用いた手法を経て、AsunaはRÉCITから発表される今作「Mille Drops」でも、新たな表現の基軸を示唆しながら、彼らしく瑞々しい音楽を届けてくれている。 カバー写真とグラフィックは東京在住のデザイナー、牧野正幸。マスタリングはこれまでJan Jelinek、Andrew Pekler、Ursula BognerなどFaiticheのアーティストや、Pole、Fennesz、Pantha du Princeなどの作品を担当してきたベルリン在住のエンジニアで、Dial / RÉCIT のアーティストでもあるKassian Troyerが手がけている。

All Songs Written by ASUNA
Produced and Mixed by ASUNA
Mastered by Kassian Troyer
Cover Image and Graphic Design by Masayuki Makino
Publishing and Copyright Reserved by RÉCIT



音楽家/サウンド・アーティスト。Asunaは、日本の電子音楽家の新しい世代の象徴的な存在である。主にライブ、パフォーマンス、音のインスタレーションを制作している。彼の関心は、素材、空間性、文脈に向いている : どのように、ある一つの場所のサイトスペシフィックな音響的な価値を引き出すことができるのか? Asunaは様々な楽器、オブジェを組み合わせて独創的な音響体験を出現させる。

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